社内報のキソ

社内報のキソ

4-1.社内報におけるWeb/App利用のトレンド

わたしたちのコミュニケーションのありかたを大きく変えた「デジタル革命(第三次産業革命)」は1980年代に始まりましたが、今はその次の「第四次産業革命」の進行中だと言われています。Robotics、AI、IoT等の技術がかつてなく仮想空間と現実空間を融合し、経済発展と社会的課題の解決とを両立させていく時代です。

 

急速な環境変化に伴い、企業は様々な業務のオンライン化を課題としています。社内報についてもまた、社内ポータルやグループウェア、CMS(=Contents Management System)と連携したWeb社内報や、社員が携帯端末から閲覧できるApp(アプリ)社内報などを導入する会社が増えています。

 

ここでは、Web社内報・App社内報をまとめて「オンライン社内報」と呼び、社内報担当者様がその導入に取組むうえで知っておくと良い、基本的な視点や最近のトレンドを紹介します。

オンライン化の3つの利点

社内報をはじめとする社内コミュニケーションは、かつては紙媒体のみで行われていましたが、通信技術の進展に伴い、映像・Web・Appなどの媒体のバリエーションが生まれてきました。

 

ただ、現時点では「社内報」について100%オンラインに舵を切っている会社は、まだ多くはありません。大企業を中心にリモートワークが促進され、社員同士が一堂に会するイベントも開催しづらい時代背景の中で、”社員と経営をつなぐ絆”としての社内報はむしろ丁寧に作り続け、一部オンラインでも併用展開するというケースが多いようです。

 

導入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、社内報のオンライン化は、漠然としたイメージではなく、既存の紙媒体との違いや運用にかかる総コストをしっかり理解したうえで進めましょう。

 

そのために、ここではオンラインの特性である、分析可能性・即時性・双方向性について具体的に紹介します。

1、分析可能性

各コンテンツに対するアクセス数・滞在時間などのデータを手軽に集められる分析可能性はオンラインの大きな利点です。ただし、それを生かしていくためには、目的を持った設計と、定常的な分析が欠かせません。

 

社内報には、紙媒体でもオンライン媒体でも、共通に置かれる永遠の課題があります。それが「到達度」を高めることです。

 

「到達度」とは、社内報に掲載されている情報が読者である社員にしっかり届いているかどうかという概念です。かつては読者アンケートで調べるものでしたが、オンラインでは幅広いパフォーマンスがダイレクトにとれるようになります。

 

💡社内報コンサルタントからのワンポイントアドバイス<
オンライン化すれば自動的に到達度があがるというものではありません。例えばApp社内報で「記事が更新されましたよ」というプッシュ通知を送っても、内容がイマイチだったりマンネリ化してしまったりすると、たちまち読者は受信をノイズとして無視するようになります。オンラインの利点はあくまでデータが正確にとれるというところ。それを業務改善に生かすには、目的に基づく継続的な解析が必要です。

 

2、即時性

オンラインの情報発信は、紙ベースの情報発信に比べると、新しい記事を公開したり、訂正したりというアップデート作業が格段に簡単です。物理的な印刷・配布を省略でき、もちろんコストも下がります。

 

社内コミュニケーションのなかでも、ニュース速報や業務連絡のような発信はこのオンラインの即時性と相性が良く、イントラネットや社内ポータルは既にオンライン化している会社も多いはずです。

 

では、”内なるPR”としての「社内報」のオンライン化はどうでしょうか。

 

第Ⅲ章で紹介してきた通り、社内報には常に経営課題に沿った「目的」があります。それに基づき行われる「取材・編集」の工程は、媒体がなんであっても省略はできません。社内報制作にかかる業務は単純に「オンライン化したら楽になる」というものではないのです。

 

情報発信のオンライン化にかかるプロセスの変化

 

企画 取材 編集 校正 印刷 配賦 修正 分析 更新
ここまでにかかる工数は本質的に同じ オンライン化で削減できる オンライン化で粒度が上がる

 

システム導入に踏み切る前に、自社の社内報の課題を棚卸し、導入後の運用イメージを具体的に検討しましょう。

 

 

3、双方向性

オンライン(Web・App)社内報のもう一つの利点が「双方向性」です。読者の投稿コーナーやアンケート結果紹介などは定番企画ですが、オンラインでは、それらの読者の参画のハードルをぐっと下げることができます。

 

双方向性活用の例

  • 個別の記事に「いいね!」や「コメント」をつけられる
  • アンケートに投稿してもらい、結果をリアルタイムで公開できる
  • 社員の投稿で構成される動的なコーナーを運用できる

 

様々なオンライン社内報の機能を、目的に応じて積極的に使いこなしていけば、よりライブ感のある良い媒体になるに違いありません。

Web/App社内報導入の前提

働き方改革でオフィスでのフリーアドレス制が導入されたり、テレワークのインフラ整備が進むなかで、オンライン社内報を導入する企業はこれからも増えていく見通しです。ここでは、その導入時におさえておくべき前提をいくつか紹介します。

 

1、既存アカウントのSSOを使う

オンライン社内報はその情報セキュリティを鑑み、誰でもアクセスできるサイトとしてではなく社員ログイン等を条件に公開する必要があります。

他にも基幹システムがあるのに社内報だけ独立したID/PWにしてしまうと、それだけでアクセス率が大幅に下がります。原則としては、会社ドメインに紐づくアカウント(メールアドレス)と連動させたSSO(シングル・サインオン)を用いるのがおすすめです。

 

 

2、携帯端末の貸与の有無を確認する

Web社内報とApp(アプリ)社内報を比較した場合、Webが適しているのは、パソコン画面に向かっているデスクワークの社員が多い組織です。

 

一方で、Appは、社内報店舗スタッフが全国に散らばっている小売業や、外回りの営業が多い組織、工場勤務者が多い製造業などに向いています。

 

Web/Appの両方を運用する場合は、双方に同じ記事を同時配信できるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を使って、一元管理しましょう。

 

ただし、Appの場合のもう一つ考えておくべき注意点としては、閲覧にかかる通信料の扱いです。スマートフォンの個人普及率は8割を超える時代ですが、社用端末を全従業員に貸与する会社はまだ数%しかないので、社内報通読も業務の一環と考える場合は、閲覧にかかる通信料の扱いポリシーを会社として明確にしておく必要があります。

 

義務ではなく任意として、見たい人の自己負担で導入する会社もありますが、いずれの場合も、自社インフラの現状を確認し、法務部や人事部などのコンセンサスも得ながら企画を進めましょう。

 

 

3、他部門との協業体制

冊子型社内報の運用はほぼ担当部門のみで完結していた会社でも、オンライン社内報を導入する際には他部門の協力が必須となります。

 

まず要件定義やシステム選定で巻き込まねばならないのがIT部門です。実現したいことや目的をしっかり共有し、既存のポータルやグループウェア、CSMとのつなぎこみ、セキュリティポリシー等の課題をクリアしましょう。

 

また、オンラインの即時性・双方向性を生かすために、個別のコーナーのコンテンツの投稿権限を、他部門に開く可能性もあります。そのような場合、オンライン社内報の運用における担当部門の役割は、従来の編集プロジェクトマネジメントの枠組みを超えて、全社的な情報の流れのファシリテーションに近い立ち位置になっていくケースもあることを知っておきましょう。

 

次の章では、導入後の具体的な運用について説明していきます。

 

まとめ

この記事では、オンライン社内報の利点と前提について紹介しました。オンラインでのインナーコミュニケーションは非常に大切ですが、しっかりと全貌を理解していないと、思ったような結果が出ません。前提条件をもとに、自社に合った運用方法を考えてみましょう!

 

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