2020年8月21日 制作の流れを知りたい 3520 views
3-4.巻き込み力を強化する
社内報作成に欠かせない他者の協力
社内報制作は、広報部門だけで実施できるものではありません。他部署の協力やさまざまなステークホルダーからの情報提供があってこそ完成します。しかしながら、なかなか優先度を上げてもらえず、情報や原稿のスムーズな収集、制作の滞りない進行に苦労されている方も多いのではないでしょうか。今回は、快く協力いただき、一緒に企画づくりを円滑に進めていくためのポイントをご紹介します。
寄稿依頼
寄稿とは、社員の方に頼んで、原稿を書いてもらうことです。取材や情報提供など協力していただく手段はさまざまですが、寄稿は社員の生の声を伝えることができると言う利点があるため、多くの場面で有効です。しかし、設定通りに寄稿されず、結果的に制作進行に影響がでてしまうこともあります。そこで、スムーズな制作を実現するため有効なのが、寄稿者の目線に立った「寄稿依頼書」の作成です。
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- 1企画の意義、目的を明確に
例えば工場勤務の社員に単に「仕事のやりがいを教えてください」とお願いしても、「社員との交流がとても楽しい」などの職場に対する想いから、「○○作業がとても難しいが、その分責任がありとても面白いです」など具体的な業務に関する意見まで、意図しない様々な回答を得てしまいます。しかし、寄稿依頼書で「今回の企画では、〇〇工場の職場の雰囲気の良さを伝えることで、他の工場に勤務する社員にも同様の行動を促したい」といったように目的や趣旨を伝えておくと、寄稿者はその目的に沿って考えた原稿を書けるようになり、情報に統一感を持たせることができます。
- 2期限や字数の制約を
制約によって寄稿者は逆算したスケジュールを立てることができますが、期限が明確になっていない場合、時間が空いたら書こう、後でやろう、と後回しにされてしまい、なかなか原稿が入稿されないという事態に陥ってしまいます。また、寄稿いただいた原稿の字数がレイアウトの予定を超えていたため急な修正が発生した、などもありがちな進行ミスです。「いつまでに寄稿してください、何字以内に収めてください」などの制約の明記を心掛けましょう。
そして社内報の寄稿や情報収集をスムーズに進めるためには、寄稿しやすい・寄稿したくなる環境を担当者様がつくり出すことが大切です。
寄稿者の上司などと連携することで正式な業務として寄稿を依頼でき、ある程度の強制力があるうえで、普段の業務と変わらないパフォーマンスを発揮してもらう事が可能となります。ただし、寄稿者にとって負担となってしまうような依頼は、それ以降の取材等の依頼も難しくなってしまいます。無理のない範囲で周囲の協力を仰ぎ依頼しましょう。
社内全体での作成、他部署の巻き込み
他部署にとって、全社員に自部署のことをPRできるのがこの社内報の場。「社内報に新しい福利厚生の紹介記事を掲載することで、認知度が上がり、利用者も増えた!」「社内報で海外プロジェクトの紹介をしたところ、海外赴任希望者が増加した!」など、社内報に掲載することでさまざまな成果につながっています。だからこそ、他部署の方にそのメリットや意義を理解してもらえるように伝え、発信すべきことを引き出してあげることが大切です。
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- 1編集会議への参加
他部署からの「社内報を使って、社員にこんな行動を取るように促したい」「自部署で取り組んでいるこんな活動を伝えたい」という要望に協力することで、社内報を通じて全社の一体感を高める、横の連携を強くする、といった社内報発行目的の達成に近づいていくでしょう。そこで、社内報の編集会議(制作会社との打ち合わせの場)に参加してもらい、その場で伝えたいことを明確にし、表現の認識を合わせることで、大幅な原稿やデザインの修正なく、伝えたい情報を社員により伝わりやすいように編集することができます。
- 2部署のトップを巻き込む
他部署の方を巻き込むためには、まず「部署のトップを巻き込む」ことが大事です。他部署の部課長に対して、社内報に掲載することの利点を伝え、トップから巻き込むことでスムーズな原稿依頼が可能になることがあります。その場合、社内報の発行目的や企画の意図をしっかりと伝え、この企画によってどのような成果につながるのか、きちんと説明することが大切です。社内報制作への理解と協力につながりますし、場合によっては自主的に掲載依頼が寄せられるようになる可能性もあります。
- 3分かりやすく言い換える
制作にあたり、担当者様には、他部署からもらったものをそのまま載せるのではなく、その部署が発信したいことを理解した上で、社員に分かりやすく伝えるために編集することが求められます。
他部署の方にも、編集を加える必要があることを理解してもらい、伝えたいメッセージを社員に確実に伝えられるようにしましょう。
担当者様が積極的に他部署との関係性をつくることで、社内報の価値を高めることができます。他部署の方に全社発信できる社内報のメリットを周知させ、全社一丸となって社内報制作に取り組んでいけるようにしましょう。
活発な活動を図る工夫
全国展開している企業などでは拠点ごとに社内報編集委員を置いている場合が多くあります。そうした企業では、編集委員の方々の役割がとても重要となります。
例えば、コミュニケーション企画でペット自慢を掲載する場合。メールで「ペット自慢を送ってください!」と送付するだけでは、なかなか反応は得られません。しかし、各地にいる編集委員がリマインドとしてさまざまな社員に個別に声をかるとたくさんの素材が集まったりします。絶対に協力したくないと思う社員は実は少数で、協力したくないわけじゃないけどちょっと勇気が出ない、時間がない…といった社員は多いので、臆することない声掛けで、そのような皆さんの背中を押すことが出来ます。
正しい情報か、伝えたい情報か、伝わる情報か
社内報の作成では、“正しい”情報を発信していくことが不可欠です。そこで、複数人の目を通すなど、原稿や誌面の入念なチェックによって誤りのない情報を発信しましょう。
- 誌面チェックの段取り
- 1スケジュールの共有
制作を始める段階で発行までのスケジュールを立てておくと、いつ、誰の確認が必要になるかは最初に把握することができます。取材や撮影日を初めに押さえることはもちろん、社長や役員、部内の上司、寄稿者といった誌面の確認が必要な方のスケジュールも同時に押さえましょう。
確認者が経営トップなどで社内にいないことが多い場合には、事前に確認いただける日程をしっかりと押さえ、スケジュール表にも確認日時を記載しておきましょう。この時、万が一に備えて、チェックに要する日数+1~2日の余裕を持って進行することが望ましいです。そして社内報は会社の情報を伝える媒体として全社員の目に入るものです。部内でのチェックが基本とはなりますが、会社の方針や社長のメッセージなどを掲載する場合には社長のチェックも必要となるため、企画内容によっては社長のチェックの時間もおさえておきましょう。
- 2発行前チェック
たくさんの人が関わる社内報制作においては、正しい情報を掲載していくため、チェックの段取りがとても大切です。企画で取り上げた方や、原稿を書いてくださった方には原稿とデザインをはめた誌面を必ずチェックしていただきます。掲載誌面上のデザインや、文章、お名前に間違いがないか必ずご本人の確認を経てから、発行します。
また、レイアウト・デザインまで完成した最終段階でチェックしてもらうのではなく、台割・企画立案・原稿・レイアウトと各工程の進行が完了した段階でその都度チェックを挟むことができれば、進行途中で大きな修正が入らず、スケジュールから大きく外れることは少なくなります。
誌面チェックのポイント
2回の部内チェックを
1回目の部内チェックはデザインに反映する前の原稿で内容を確認します。デザインに反映してからの原稿確認は時間のロスにつながります。2回目の部内チェックは全ページの原稿がデザインにはめられた段階で行います。一企画ごとにばらばらに確認をお願いするのは非効率ですから、ほぼ全ページの原稿がそろってから一度に確認を依頼します。また、デザインが固まってからの大きな修正は時間がかかるため、掲載要素の確認などは掲載要素の確認などは、初めて原稿を頂いた初稿の段階で済ませるのがよいです。
職位の高い相手への配慮
初校から修正を重ね、ほぼ完成状態になった誌面を役員の方にチェックしていただきます。このとき、役員の方の確認期間は長めに取るようにしましょう。役員の方々はお忙しいため、提出後すぐに確認していただくことは難しく、また全ページの確認を一度にお願いするため時間がかかります。1週間ほど確認期間として確保しておくと、余裕を持って工程を進めることができます。また、役員の方にお渡しする際には、より仕上がりに近い形で用意しましょう。原寸サイズで出力し、できれば冊子の形に製本して見ていただくことをおすすめします。
感謝の気持ちを
社内報は一人では作ることができません。協力いただいた皆さんに、感謝の気持ちを伝えていきましょう。寄稿者や情報提供者へ、社内報担当者様から感謝のメールや電話をすることはとても大切です。社内の協力者であれば、一足早くお渡しするというのも、感謝の気持ちが伝わる配慮でしょう。
お礼の品を添える
完成品を渡す際、お菓子やメッセージカード、図書カードなどの金券を贈ったり、自社ノベルティや地方取材で買ってきた名産品などを渡すということもあります。お礼の品が絶対に必要というわけではありませんが、社内報制作に協力してくださった方々への感謝の気持ちが一層伝わり、次の原稿の依頼もしやすくなるかもしれません。
外部の方には謝礼金を用意することも
社外の著名人に取材・インタビューをしたり、原稿執筆を依頼したりした場合は、謝礼を支払う場合があります。謝礼の額、受け渡し方法などは取材前にプロダクションなどと相談し、決めておきましょう。
完成した部分を外部の協力者にお渡しする
社外の人へのお渡しは基本的に郵送となりますが、社外秘の情報を含む場合は、協力者といえども完成した社内報をお渡しすることはできません。ご協力いただいた企画のみPDFデータでお渡しすることを事前に伝えておきましょう。
一人では決して発行できない社内報。協力してくださった方々にはしっかりと感謝の気持ちを伝え、次の協力も仰ぎやすいコミュニケーションをこころがけましょう。
外部協力会社の選定
デザインや印刷といった、自社での対応が難しい工程を担う制作会社選びは、社内報のこれからを決める重要な選択です。最初から一社に決めて依頼することもありますが、複数の会社をピックアップし、「コンペ」を開催する手段も多くの会社が用います。
会社によってコンペを開催する時期や理由はさまざまで、数年に一度定期開催する会社もあれば、現在の制作会社とのやり取りが進めにくいため、または誌面のマンネリ化を防ぐ新鮮なアイデアを取り入れるため、といった理由で開催する会社もあります。
コンペでは、同じ条件・同じ要望をもとに制作会社にそれぞれの提案をしてもらうことで、自分の会社をどれだけ理解してくれるのか、どんなデザインをつくれるのかといった実力をみることができます。また、編集会議に参加できるのかどうかや、アンケートの作成・集計・分析を依頼できるかなど、制作会社にどこまで細かな業務委託ができるかを確認することもできます。
コンペ開催までの流れ
では、コンペを開催するまでの具体的な流れを確認していきましょう。
- 要件定義・オリエンテーションシートの作成
↓
- オリエンテーションの実勢(複数社合同、個別開催などやり方はさまざま)
↓(オリエンテーションから3~4週間後)
- コンペ開催
↓
- 一週間以内に返事
以上のような段取りを踏むことになります。
オリエンテーションの開催
コンペの開催を決めたら、まずは制作会社にその旨を伝え、オリエンテーションを開きます。オリエンテーションは、自分たちがコンペを開催する理由を含めて「条件・要望」を提示する場であり、また、制作会社からの質問に応じ、お互いの認識に齟齬がないかを確認する場です。ただ要望を提示しても、制作会社は本来持つ力を発揮することができません。より良い提案を見せてもらうために、十分な情報提供をしましょう。
制作会社は、オリエンテーションの内容を踏まえて、内容やデザインの提案書の作成に入ります。この過程で制作会社からヒアリングの打診をする場合がありますが、より良いご提案をしたいという思いでのお願いですから、対面での打ち合わせや電話等で可能な限り応じるようにしましょう。
制作会社に渡す資料を揃える
制作会社にはそれまでの社内報に関する情報がありません。オリエンテーションで与えられた情報だけでご提案する社内報の構成を考えることになるため、参考資料は不足なく用意しましょう。主に、オリエンテーションシートや、過去号であるバックナンバーが必要になります。提案をしてほしい企画がある場合は、その企画に関する資料も付随してお渡しします。オリエンテーションシートは、事例をPDFで貼るなどし、制作会社が提案しやすくなるよう工夫しましょう。また、コンペ参加により制作会社で発生した費用は基本的に制作会社持ちです。この旨もシートに記載しておきましょう。
そして大切なことは、どの会社にも「同じ条件・同じ要望」を提示するということ。コンペは同じ要望でどれだけのクオリティのものを創り出せるのかを見せてもらい、比較する場です。条件が異なっていては、正しい判断ができなくなってしまうため、注意する必要があります。
コンペの日程を決めて、上司のスケジュールを抑える
コンペの当日には、社内参加者の予定に合わせていつ行うのかを決定し、あらかじめ上司のスケジュールをおさえます。オリエンテーションは制作会社ごとに個別で行う場合と、合同で行う場合がありますので、この時点でどちらにするか決定します。
個別で行う場合は、個々の会社について詳しく聞くことができます。しかし、コンペに参加してもらう会社の分打ち合わせをしないといけないため、時間がかかってしまうといったデメリットもありますので気を付けましょう。
合同で行う場合は、与える情報を統一できるため、同条件で行えるというメリットがあります。
条件設定の注意点~提案の幅を広げるために~
このような内容は欲しいという提示は必要ですが、提示する条件は固めすぎないようにしましょう。「○○という課題を解決したい、そのために紙・WEBなどの媒体は問わない」「〇〇という課題を持っているので、これを解決していくようなものをやりたい」といった、ある程度幅を持たせた条件で提示すると、制作会社から幅広い提案をもらうことができます。
コンペ終了後
フィードバックも踏まえた結果報告。参加した制作会社に対して、提案へのフィードバックとともに結果を伝えましょう。取引を決めた会社は、何が決め手となったのか、逆に選ばなかった会社は何が足りなかったかを伝えましょう。フィードバックは、直接お会いすることもありますが、電話やメールで行う場合もあります 。
発注側からすると、コンペを開催するというのはとても大変な労力がかかるものです。
しかし、定期的にコンペを開催することが制作物のクオリティアップにもつながりますし、過去号の進め方や作り方を見直す良い機会になるので、より良い社内報を作るための重要な工程です。3~5年に1度コンペを開かれる会社が多いですので、ぜひ、そのタイミングで見直してみてはいかがでしょうか。
まとめ
社内報が完成するまでに、多くの方が関わっています。依頼からお礼まで、快くご協力いただくためには、ちょっとの工夫がカギとなります。全社一丸となって社内報制作に取り組めるよう、協力したくなるような社内報づくりを目指しましょう。
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- ・社員に快く掲載協力してもらえない
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- Q 社員が社内報に出るのを嫌がります。執筆を依頼しても、忙しさを理由に断られてしまいます。
- A 負担の少ない企画で敷居を下げつつ、社内報のプレゼンスをあげるための取組を続けていきましょう。
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- ・伝統のデザインを変えさせてもらえない
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- Q うちの社内報は固くて若手に読まれないのですが、数十年の伝統と役員の拘りがあって、簡単にデザインを変えることができません。
A 一度に全体をリニューアルするのは難しくても、一つ一つの企画から合意を得ながら改善していきましょう。
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- ・伝統のデザインを変えさせてもらえない
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- ・コストを理由にカラー化に反対される
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- Q 社内報をカラーにしたらもっと読まれると思うのですが「コストがかかる」と言われるとそれ以上、上司を説得できません。
- A 説得力のある「費用対効果」を語れるようになるための素材として、カラー印刷の効果・メリット等を紹介します。
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- ・コストを理由にカラー化に反対される
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・グループ報への関心が低い -
- Q グループ報の閲覧率を上げたいのですが、M&Aで一緒になった会社同士は互いのことよく知らず、興味もないという声を聞きます。
A 「連携」や「共通の価値観」をテーマに、全体方針だけではなく、各社の紹介の企画を増やしていきましょう。
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- ・社員に快く掲載協力してもらえない