2020年8月20日 人気・トレンド 199 views
グローバル報とは?よくある質問をまとめました
日本企業のグローバル化を進む中で、海外の支社、支店、関係会社にも情報を共有していくことを目的としたグローバル社内報がつくられるようになりました。海外展開やM&A、外国人採用などが加速する中、グローバルコミュニケーションを支えるツールとして見直されています。
企業のグローバル化の経緯や進展具合によってグローバル報の目的や形態は異なります。本記事では、グローバル報にかかわるよくある質問をまとめました。基本をおさえ、自社に見合ったグローバル報の形を考えてみましょう。
Q.グローバル報の一般的な発行目的は?
A.社員に、自社の海外事業に目を向けてもらいたい、グローバルブランディングをしたいなど、その経緯は様々ですが、大きくは以下の目的でつくられることが多いようです。
トップからの意思伝達、経営方針の明確化
経営情報が届きにくい海外現地で働く従業員に向けて、経営情報を届けることを目的としています。トップが顔を出して方針を語るなど、経営情報を語ることでベクトルを一致させることを図ります。
社員の努力/好事例の共有
ロールモデルとなる社員やプロジェクトの紹介し、海外で働く日本人・外国人の活躍にスポットライトをあてます。経営への参画意識を高めるとともに、日本国内で活躍する従業員に対して、規範となる働き方を共有します。
Q.グローバル法の発行形態にはどんなパターンがあるの?
A.大きく三種類の発行形式が採用されることが多いです。
ミラー版
日本語から現地語に翻訳したもの。最も多くの企業で導入されているのがこの形式です。一方で日本人向けのコンテンツに偏ることが多く、海外の日本人駐在員以外には根付きにくい、という課題があります。
内容:△(日本人向けのコンテンツに偏る)
負担:〇(日本語版のデザインに翻訳原稿を流しこむだけ。企画編集の工程を省略できる)
情報鮮度:△(日本語版と1~2週間のタイムラグが発生する)
コスト:〇~△(PDFで発行する場合、翻訳費とデザイン費のみで発行できる)
日英併記版
一冊の中に日本語と英語を両表記したもの。別冊号をつくるコストを抑える目的や、日本人向けの英語教育の一貫として発行されるケースがあります。各ページに同じ内容が言語別に記載されるため、情報量が少なくなってしまうことが難点です。
内容:△(日本人向けのコンテンツに偏ることに加え、情報量も減る)
負担:△(日本語版と同時並行で進める必要があり、工程が非常に複雑になる)
情報鮮度:〇(日本語版とタイムラグが発生しない)
コスト:〇(制作も印刷も一冊の制作費の中に吸収できるためコストを抑えられる)
オリジナル版
日本版との連動は考えず、海外スタッフに向けた独自のコンテンツを掲載するもの。もう一冊社内報をつくるようなもので、体制も組みなおす必要があるため、非常に大変です。
内容:◎(読者ファーストで掲載ネタの選定や企画を組むことができる)
負担:×(海外版を制作するための社内体制を整える必要がでてくる。
日本語版も制作する場合非常に大変)
情報鮮度:◎(発行タイミングを自由に設定できる)
コスト:×(企画・制作・印刷と全てに費用がかかる)
Q.グローバル報のための企画とは?
A.海外従業員の参加意識を高めることが、読まれるための絶対条件です
日本語版の社内報を現地語に翻訳する形が一般的ですが、以下のような内容を取り入れて発行されるケースも多くあります。
- オフィスの所在地(地図上に明示)
- グループ会社や支店のプロフィールや注力事業(オフィスの住所、正式な英字表記、社員数、設立年、主要業務など)
- 現地向け製品の紹介(パッケージや販促、ターゲットの日本との違い、顧客の声、現地の店舗に商品が置かれている様子など)
- 駐在社員のインタビュー(プロフィールとともに紹介し、駐在業務のやりがいや苦労、仕事外での楽しみなどを伺う)
- 現地の市場動向、今後の見通し
- 拠点長から、現地の市場開拓の苦労や今後の展望を伺う
- 生産現場紹介
- 現地採用社員のインタビューなど
大事なことは、海外発の記事を用意し、支店やグループをきちんと取り上げるコーナーを設けることです。参加意識を高め、読まれるグローバル報を目指しましょう。
Q.読者ターゲットはどうやって絞るべき?
A.まずは読者を把握し、ターゲットを絞ろう
一般的にグローバル報といっても、対象となる読者は様々であるため、メインターゲットをある程度絞ることが重要です。自社の海外進出の度合など、検討すべきことが多く、非常に迷うところです。まずは対象となる読者がどの程度いらっしゃるのか、把握するところから始めましょう。
- 国内の日本人従業員
- 国内の外国人従業員
- 海外の日本人駐在員
- 海外の外国人従業員
- 全マネージャー層
ざっと考えても、これだけの読者が想定されます。グローバル化の進展に応じて、メインターゲットを定めましょう。
- 1海外拠点の日本人スタッフ
- 特に海外進出をはじめたての企業では、わずかな日本人社員が事業化に向けて邁進していることが多いです。現地の取り組みや成功事例を称え、日本の社員にも刺激を与える内容にしましょう。この場合は、現地スタッフはまだ多くないので、グローバル報の言語は日本語のみでもよいでしょう。
- 2海外拠点の管理者層
- 海外拠点が軌道に乗り始めると、日本人社員に加え、現地の社員を管理者層として迎えている場合が多いです。コンテンツも現地のスタッフを意識する必要が出てきます。会社の経営方針などを理解してもらい、現地でのマネジメントに反映してもらいましょう。
- 3海外拠点の現地採用者
- 海外拠点の現地採用者は、日本人と比べると入れ替えが多く、定着率を上げるための企画が重要です。言語対応だけでなく、地域に合わせたコンテンツをつくることで、グループ全体の連帯感を高めましょう。また、現地のスタッフに焦点を当てた企画を行うことも有効です。
Q.海外拠点とのスケジュール管理はどうすればいい?
A.あらかじめ余裕をもったスケジュールを確保しましょう
時差の違い、言葉の違い、組織が見えにくいなど、海外拠点とのやり取りは、確認に要する時間やプロセスをコントロールしにくくなります。思い通りに進まないという前提に立って、最初から考慮したスケジュールづくりをしておきましょう。
原稿での確認が必要なのか、誌面での確認が必要なのか、など現地における確認プロセスを事前に把握しておくのも有効です。
また、旧正月や行事・イベントなど、各国の習慣にあわせた制作スケジュールを組み立てましょう。
Q.外国語版発行までにタイムラグが生じます。許容範囲は?
A.日本語版とのタイムラグは2週間程度でおさめましょう
ミラー版(日本語社内報を翻訳して制作する場合)の場合、日本語版との発行のタイムラグを2週間程度でおさめるようにしましょう。翻訳と制作あわせておおよそ4週間ほどの時間が見込まれるため、日本語版の文字原稿はほぼ固まり始める三校~色校正くらいから翻訳を始めると良いでしょう。
Q.海外の情報収集体制はどうやってつくる?
A.可能であれば、現地に編集委員をおいて、定期的に会議を行いましょう
海外の情報を集めていくうえで、必ずぶつかる壁が、いかに海外の動向を把握するかです。可能であれば、定期的に情報を集まる体制として、現地に編集委員を置いて、定期的に会議を開催することを目指しましょう。
編集委員と呼べるスタッフがいない場合、日本人出向者や現地スタッフに協力を仰ぐケースも多いです。以下に、それぞれの手法のメリットデメリットをまとめました。
各国・各拠点に編集担当者がいる場合
【メリット】各国・各拠点の現状に応じて最適な人選がされやすい
【デメリット】現地からの要望が強くなり、取りまとめが困難になることも
各国・各拠点の出向者に依頼する場合
【メリット】日本語でのやりとりが可能なため、企画意図が伝わりやすく、比較的締切に遅れがない
【デメリット】出向者の業務負荷が増える、いつも似たような人選になりがち、現地のリアルなネタやニーズがあがりにくくなる
各国現地のスタッフに直接依頼する場合
【メリット】直接やりとりするためタイムラグが生じない、依頼や修正の意図を伝えやすい
【デメリット】言語の壁、人選が困難、人選と依頼の手間が大きい
海外社員にも読んでもらうためにはどうすべき?
A.日本のように紙を出力する文化がありません。最適な配布方法を検討しましょう
イントラ上に翻訳した社内報のPDFを格納する方式で配布する企業が非常に多いですが、ほとんどダウンロードされていないのが実態です。また、グループの規模が大きくなるほど、配布ルートやコミュニケーションの基盤となるシステムも会社によって異なります。社内で事前に調査し、最適な配布方式を検討しましょう。
翻訳しやすい文章をつくるためには、何に気を付けたらいい?
A.以下のポイントに気をつけましょう
社内用語も略さずに書く
「情シス部」⇒「情報システム部」など、単語の省略は避けるようにしましょう。頻出するキーワードや、社内の合言葉などは定訳を決め、単語リストを翻訳会社と共有するのも手です。
文章をとにかく短く区切る
節の区切り(動詞の切れ目や、接続詞の前)で文章を区切ります。文章を区切った後に、必要に応じて主語や接続詞を補うこともポイント。
次第に寒くなってきましたが、体調を崩さないよう気を付けましょう。
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次に寒くなってきました。しかし体調を崩さないよう、皆さん気をつけましょう。
シンプルな言い回しにする
「…ということ」「…ものである」「…したいと思う」「…などによって」といった表現を取り除きます。
先方のニーズをキャッチするため、直接訪問するというかたちをとりました。
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先方のニーズをキャッチするため、直接訪問することにした。
具体的な動詞を使う
「…する」「…を行う」「…になる」などの動詞は使わず、意味を限定する動詞を用いる。
明日は雨になる予報だ。
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明日は雨が降る予報だ。
助詞「てにをは」に気をつける
「彼女は髪が長い」のように主格を表さない「は」や、「私の退任した後の」のように主格を表す「の」には特に注意しましょう。
最近のスマートフォンは操作が難しい。
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最近のスマートフォンの操作は難しい。
※「スマートフォンは」は主語でないため、目的格になるよう書き換える。
省略を補う
省略されている主語や目的語、動詞を補うよう意識しましょう。
元気な姿が見れました。
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現場の皆さんの元気な姿が見れました。
修飾を明確にする
読み方によって意味がどちらともとれる文章は、語順を変えるなどして明確な文章にします。
私は新しいジャケットとネクタイを身に着けて出かけました。
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私はネクタイと新しいジャケットを身に着けて出かけました。
より英語にしやすい表現にする
・複合動詞、複合名詞を切り分ける
銃規制緩和批判 ⇒ 銃の規制緩和に対する批判
・造語「…的」「…性」「…化」を避ける
収支の不明点の見える化 ⇒ 収支の不明点を明らかにする
・無生物主語を使う
この機械によって生産性が向上した。
⇒
この機械が生産性を向上させた。
まとめ
グローバル報と言っても、その企業が置かれている状況によって、さまざまな目的や形態が考えられます。海外拠点とのやりとりの難しさや翻訳の手続きなど、大変なことは多くありますが、海外拠点にも自社の経営を知ってもらい、グループ一丸となって事業に取り組む機運をつくることにつなげられる非常に有効なツールです。上記のQ&Aをもとに、自社に適したグローバル報のあり方を検討してみてはいかがでしょうか。